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最近、私の中で密かなブームがある。
読んでいる小説のお気に入りの部分にマーカーやペンで線を引くことだ。
誰のためでもない、自分のためだけに行っている。
白紙の上に綺麗に配列された文字。そんな美しい文面に自ら汚い線を引いてしまうなんて
マナーの厳しい小学校時代の担任が見たら「はしたない」と言われてしまいそうだが、これはこれでいいのだ。綺麗な本に自分勝手に線を引くなんて、少しの罪悪感が生じて何だか清々しいではないか。
それにわざわざ感動する箇所だけをくり抜いてメモ帳に書き写すような几帳面さは持ち合わせていない。まさに大雑把田舎女子大生(20)にうってつけの技法である。
この本のここを人に伝えたい!という感情が、読んでいてどうしても湧く生き物なので尚更だ。忍法記憶ラインの術。
しかも現状、こんな私の謎論に耳を傾けてくれる少数派の意見はかなり重要視するべきであると思う。そんな貴重な意見交換会の時のためにもやはり、加色して覚えておきたいのだ。
しかし唯一の難点といえば、某買い取り兼古本屋に持っていけないということである。
所々の文章にカラフルなラインが引かれた本を誰が買うだろうか。
ましてやどこのどんな人間が引いたかもわからないのに。
私はそんなこともあろうかと、手放したくないと本気で思った本にだけラインを引くようにしている。私にしか実感できない謎ラインと、この頭の足りない私が認めた特別視されるべき本というお墨付き感がその本の価値を一層際立たせてくれる。と思う。
恥ずかしながら、私が将来ヨボヨボのおばあちゃんになってもそれは続けたいことの1つである。